【3】 歴史は繰り返す
今回の「東日本大震災」はミレニアムに一度の未曾有の大災害と言われた。つまりはおよそ1000年前の平安時代869年に東北を襲った「貞観地震」と呼ばれる大地震・大津波の再来だと言うのだ。しかし私はその説明だけでは納得がいかない。貞観地震はまさしく100%「天災」と言えただろが、今回の「東日本大震災」は、その後の復興の難しさを見れば「原発事故」が巨大な癌となっているので「天災」による「人災」であり貞観地震の時とは明らかに質が違う。
さて「歴史は繰り返し」について語ってゆく前にまずは「時間とは?」について述べておきたい。 日の出から日の入りまでの時の間を「自然の時間」と言うそうだが、人間はその自然時間を24等分に区分けし、更にその1等分を60分割してそれを1分と言う単位に決めた。更にその1分を60分割して1秒という単位を作り、季節変化に関係なく時間を固定化した。これを人間が作った時間、「人工的時間」と言うらしい。
動物、植物などのすべて万物は「自然の時間」に従って生き続けてきていたが、人間だけが13世紀頃に自然に対抗して「時間」の概念を作り出し、西欧には機械式(歯車式)時計が教会の屋根に取り付けられたと言う。兎に角『自然に対抗して作り上げたものは、それに対して必ず負のリアクションが生まれる』と私は信じている。この事に関しては今回の「復活私論」の根底に流れる思想であり、この考えに関して詳しくは後で触れるとして、ここでは「人工的時間」がどんな負のリアクションを起こしているかの一例について簡単に触れておこう。
この人工的時間軸を作ったお陰で、過去の記録(歴史)をきれいに整理しての残すことが出来、私達もきちっと計画的に生活できるすばらしい概念を作ってくれたと思えるが、一方で、生物はそれぞれが天から与えられた体内時計を持っており、人間の場合は例えば「脈拍」というリズムを持っている。しかし人間が作った時間の「秒」の周期(時間の長さ)は脈拍よりわずかながら短く設定されてしまった。これが何らかの形で人間に「ストレス」を与えていると言われている。ご承知のようにストレスとは「こころの病の源」なのであり、と言うことは人工的時間が作られた後、つまり13世紀以降「こころの病」の患者が増え続けて来ていることになる。今の世の中を眺めれば「なるほど!」と納得してしまうのだが、その証拠を解説しよう。
現代では「気分障害」(うつ病、躁うつ病、気分変調症など)の患者が日本でも激増しているのだが(2008年調査で患者が約百万人、内6割が男性)、その治療法として『人工的な時間を示す時計類は体から離して一切目に入らないようにし、自然の中で暮らし、夜は照明を用いず、日没後速やかに眠るようにし、日の出に合わせて起床し太陽光を浴びるようにすると、やがてストレスから開放されて治癒される』という方法が取られているのである。
さて話を「歴史」に戻そう。我々は4次元の世界に生きている。つまり方向転換が可能な3次元の空間と、もう一つは戻すことの出来ない「時間」の次元で、我々はその4次元の中で生きている訳だが、時間軸では「今=現在」の前の部分、つまり過ぎ去った時間帯を「過去」と言い、これから来ると思われる先の時間を「未来」と呼ぶ。そして過去においての出来事を綴ったのが「歴史」である。
ところで横道に反れるが、時間軸は元には戻れないと言われるが、もし光の速度より早い物体が作れれば、過去に遡ることが出来るらしい。その光より早い物体に乗って地球から空に向って飛び出して、望遠鏡で地球上を眺めると、「おっと、江戸時代が見える」という具合になり、更に早いスピードで地球から遠ざかって地球を望遠鏡で眺めると「おや、縄文時代が見える」なんていう具合らしい。この程度の話であれば「おとぎ話」を聞いているようで、心地がいいのだが、2011年9月の新聞記事を見て不快になった。その記事によれば、「スイスにある欧州合同原子核研究機構から730km離れたイタリアのグランサッソ国立研究所へ数十億のニュートリノ粒子を発射したが、光の到達時間は2.3ミリ秒であったが、ニュートリノの到達はそれより60ナノ秒ほど早く、光より早い物体が見つかったかも知れない。これはニュートリノが4次元とは別の次元への近道を見つけたのかもしれない。あるいは光速は最速と我々は思い込んでいただけなのかも知れない」という内容だった。たった生命100年ほどの人間が光より早い物体を見つけたからといって何のメリットが有ろうか。過去を覗いてもしょうがない。この実験が測定誤差で有ったとして、「おとぎ話」の世界を壊さないで欲しい。
(追記)嬉しい事に2011年11月24日の読売新聞にイタリアの研究チームによりニュートリノ「超高速」を
否定する論文が発表されたという記事が載っていた。万歳!
それでは「歴史は繰り返されている」という話に移ろう。
この話を始める前に、まずはこの「私論」の根底に在る考えを説明しておきたい。私は、世の中にあるすべてのもの、生き物(有機体)、文明、社会、非生命(無機体)などすべてのものが【誕生→成長→成熟→衰退→死/終焉】のサイクルを繰り返していると思っている。そしてそのサイクルにはその対象物によって数億〜数十億年の周期、数千年周期、何百年周期、何十年周期と、その周期の長さは多種あるわけだが、それらの周期がすべて何らかの形でお互いに関係しているのだ。
「生き物」の周期に就いては誰もが周知のことでありここで述べる必要も無かろう。人間も一人ひとりその周期を繰り返しているのだ。
「非生命」(つまり無機体)となれば「鉱物」などがその例だが、それで出来上がっている「地球」ですら、誕生が46億年前で、地球生命は太陽次第なのだが、あと26億年は大丈夫といっている点からも無機体もそれぞれで周期を持っている事が納得出来よう。そして地球が生きている以上、地球上の自然環境も億年周期で繰り返していると信じる。例えば太陽上の黒点の量により地球上の気象に影響が出るといわれているがこれにも周期説がある。
「文明」に就いてはどうか。世界史の教科書に出てくる「世界四大文明」の例で説明しよう。紀元前3500年頃、大河に沿って生まれた「メソポタミア」、「エジプト」、「インド」、「中国」の四文明はその後滅亡し、少なくとも、チグリス・ユーフラテス川や、ナイル川、インダス川、そして黄河に沿って今はもう巨大都市は残っていない。この滅亡の原因は地球上の気候変動と言われている。この辺は安田喜憲著『人類破滅の選択』(1990年6月発行 学習研究社)に詳しい。この著の中で面白いのは、遺跡の地下深くの地層分析をした結果、『旧約聖書』の「創世記」に書かれている「ノアの大洪水伝説」は紀元前2900~2800年に実際にあった大洪水であり、メソポタミアに最初の統一王朝を形成したシュメール人によってか書かれたもので、その後バビロニアからヘブライ人を通して『旧約聖書』まで語り継がれたものと分析している。そして地球の気候変動により大洪水は数千年周期で繰り返されていたと言う。今、タイ国を襲っている大洪水は洪水周期から見てその予兆ではないのか、と不吉な考えが頭をよぎった。
「文化」に関しても、その栄枯盛衰は学校で習う「歴史」の教科書にも書かれている。つまり日本の歴史上、【古代】の白鳳文化(7世紀)から、天平文化(8世紀)、唐風文化(9世紀)、国風文化(10世紀)を経て、【中世】は鎌倉文化(12世紀)、室町文化(14世紀)、そして【近世】に入り桃山文化(16世紀)や江戸文化(18世紀)が栄え、【近代】を迎えて明治時代に栄えた近代文化や大正文化を経て【現代】に入って戦後文化の中で我々は生活している訳だ。つまりは時代時代にそれぞれ特徴を持った文化が百年〜数百年単位の周期で“誕生から繁栄を経て終焉”と質を変えて繰り返して来たことになる。
と言うことは、「時間」軸上での「今=現在」は、地球生命の壮年期に位置し、地球環境は21世紀に入って大気中の温室効果ガス濃度の人為的な増加により急激な「地球温暖化現象」を引き起こしており予断を許さない。そして【欲望の奴隷】と化した「人間中心主義」の「近代文明」は行き詰まり状態の衰退期を迎え、日本の戦後文化も道徳心の薄れた「享楽文化」の真っ只中にあると言える。つまりは文明も文化も周期を持つとすれば、現在は「衰退から死/終焉」のタイミングを迎えているのだ。もし世の万物が周期を持て繰り返しているとするなら、今回の東北を襲った大災を契機に日本人がこころを有るべき姿に変えて行けば、いよいよ次の新しい文明の起こりと、それに沿った新しい文化が日本を中心に生まれて来そうな気がするのだ。
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