情報総合研究所
実践ビジネスモデル研究会


   講演:「日本は復活する‐‐‐その為のビジネスモデルは?」

                   日時: 2013年1月16日 18:00〜20:00

                   会場: 築地社会教育会館

2013年に入って最初の講演は1月16日(水)に「情報総合研究所」傘下の「実践ビジネスモデル研究会」の月例勉強会にて「日本は復活する‐‐‐その為のビジネスモデルとは?」というテーマでお話しをさせて頂きました。

今回も2時間のスピーチでしたが、全般の1時間は私の【日本復活私論】をベースにしたお話しでしたが、その骨子は『欧米型人間中心主義(資本主義)は終焉を迎えつつあり、世の万物が持つサイクル〔誕生→成長→成熟→衰退→終焉〕から考えれば、これまでの近代文明はいよいよ行き詰まり状態になり(つまり衰退から終焉へ)、これからはY染色体ハプログループにより解明された【D種族】で且つ【森の民】である我ら日本人が地球自然と共生する社会を返り咲かせるのだ』といった内容です。この【日本復活私論】に関しては、これで4回目のスピーチになりますが、この内容に関しては当HPの<スピーチ欄>に掲載されている昨年6月のNPO『生まれ育ちとこころを学ぶSUNの会』の講演報告に詳しいのでそちらをご覧頂くとして、ここでは「その為のビジネスモデルは?」のところに絞ってスピーチ内容を報告します。

ところで私は今から4年前の2009年7月に早稲田大学・異業種勉強会にて『近代文明からのしっぺ返し』というテーマでスピーチをしたのですが、その内容は,『インターネット社会の到来で社会の形がこれまでの「親分子分型」中心から次第に「寄り合い型」重視に変わって行く』と解説しました。下図はその時に使用した解説図です。

それから4年経った今、中央集権型の大企業は大きな壁にぶつかり苦しい経営に直面していますが、その一方で権限分散型のNPO的企業やベンチャー企業が徐々にではありますが、増えて来ています。そんな姿を今回は下図の「電力会社が消えてゆくかも?」と「ローソンとダイバーシティー」の2画面を使って解説しました。どちらの図を見てもその変り様がご覧いただけましょう。
左図の左側が「電力会社」が各家庭に配電している姿です。つまり上図の左側の「中央集権型」にあたります。そして左図の右側は各家庭(あるいは地域、村、団体)が独自に風力、地熱、太陽光を利用して発電し、各自がそれぞれ蓄電池に電気を貯めて、足りない所にはお互いで補完し合う姿を表しており「寄り合い型」であります。これを【スマートグリッド方式】と言っていますが、すでにある地域では実験段階に入っています。電力業界はこのままでは、きっと次第に右側のスマートグリッド化が広まってゆき、中央集権型電力会社は姿を消して行くかもしれません。

左下の図で、左側の中央集権型で示したのがセブンイレブンの姿であり、右側の色分けで示した寄り合い型がローソンの姿を示しています。

この図の解説は、セブンイレブンは中央で決めた戦略で各店舗が動くのですが、ローソンの新浪社長は10年掛けて「負けの構造」を解体し、各地の店に権限を委譲し士気をUPさせ、各店舗にその地域に合った販売戦略で「勝てる構造」に創り上げたのです。従い左図は本社をブルーで表現したらその周りの各店舗もブルー一色で表現し、右の図は各店舗が地域に合わせ各様に営業戦略を持っているので、各丸印が色分けで表現してあります。このような戦略を新浪社長は「ダイバシテー(多様性)によって活力をUPさせ、組織の捕らえ方として、従前の【ゲゼルシャフト】(機能体組織)から【ゲマインシャフト】(共同体組織)への発想転換を図った」と言っています。
これはどうゆう意味かと言いますと、【ゲゼルシャフト】とは、組織自体に目的があり、その目的を実現させる為に人材やその他の資源を集め、役割分担や指揮命令系統の整備を行って行く。従って組織利益のために構成員に犠牲が生じる場合がある。一方【ゲマインシャフト】とは、構成員一人ひとりの為に存在する組織で、最小単位では「血縁組織」がそれである。他には「町内会」「自治会」「PTA」「教会」「クラブ活動」「宗教団体」や「ゴルフ会員」などがある。
即ち、ローソンの新浪社長は経営方針を従前の“金儲け主義”から、その地域社会に合わせた“人間中心主義”に変えたということでしょう。

既存の「資本主義社会」がまだ暫く続く間は、大規模/小規模、強者/弱者、富裕層/貧困層と言った具合に両極端に二極化を更に強めて行くのでしょうが、ここでは化石燃料に依存した中央集権的な巨大資本を必要とする従来型分野ではなく、これから益々注目されてゆく「寄り合い型」分野におけるビジネスモデルの考え方とヒントを紹介したいと思います。

上図の寄り合い型社会構成の丸印の一つひとつは理念を持った“個人”であったり“ベンチャー企業”、あるいは“NPO組織”であったりします。従いそれぞれがマチマチであり定型化出来ませんので、こうすれば成功すると言ったビジネスモデルを言い当てる事は不可能でしょう。

これから時代のビジネスモデルはどうなるのかを左の画面の内容で解説しました。

これから重視される「寄り合い型」社会における新しいビジネスモデルは、第1次産業革命(18世紀)や第二次産業革命(19世紀)のように「物理空間」で考えるのではなく、インターネット傘下の所謂「情報空間」においてビジネスモデルを構築すべきでしょう。

左下の図では、今後有望視される分野を解説していますが、これら「3コウ」分野とか「3R分野(Reduce, Reuse, Rcycle)でのビジネス構築には一部を除き殆どが巨大な設備投資、先行投資が必要ですので、今後も大型企業が手掛けてゆく分野(中央集権型)と思われます。

私がここで強調したい分野とは左下の図に示す「マイクロフィナンス」や「クラウドソーシング」分野におけるビジネス作りです。つまりはインターネット世界だからこそ生まれる「個人」と「個人」を結びつける全く新しいビジネスモデルの追求です。そしてここで大事な精神は、「儲ける為のビジネス」ではなくて、「人の為になるビジネス」を大前提とするのです。これまでの中央集権型ビジネスを「資本主義に基づく」と言うなら、この権限分散型ビジネスを「人本主義に基づく」と言えましょう。そして企業で重要なのは「資本主義」下で「カネ、モノ、ヒト」と言うなら、「人本主義」下では「信用」です。
丁度タイミングよく、「日経ビジネス」2013.1.7号でその新しいビジネスモデルの実例が掲載されていましたので、ここで引用してみます。

「マイクロファイナンス」の一例:インターネット上に「Kiva」(NPO組織)という借り手の声を集め小口の資金提供者を結びつけるサイトがあります。ウガンダの農民でカカオやコーヒーの栽培農家で自分の子供達に教育を受けさせたいとしてKiva経由で資金を求めます。一方日本の高校生がKivaサイトを見ていて、自分のお金が人の役にたてばと1口、25米ドルを出資します。Kivaはこれら小口資金提供者の金額を纏めてウガンダの農民に資金を送ります。

このウガンダ農民のケースでは、675米ドルを集めることが出来て、事業を軌道に乗せ3年間で借金をほぼ返済したそうです。ここで大事なのは日本の高校生は何ら見返り(利息とか配当金)を期待などしていないことであり、人の役に立てたという満足感がその配当なのです。

同類のサイトに「Kickstarter」というのがありますが、これはサイト上に出展の広場があり、そこにアートや出版物、画期的製品やサービスを個人が出展して、その出展物に興味を持って集まってきた共感(個人の集まり)をカネに変える投資サイトです。その一例として、カナダ出身の26歳の起業家が開発した腕時計の文字盤がスッキリと良く見える腕時計が評判を呼び、それに興味を持った仲間たちが投資をしてくる。彼らの投資の対価が金銭的リターンではなく、人よりも早くその製品が欲しいという願望にある。この腕時計で起業家は1026万ドル(約8億円)を調達したそうです。

「クラウドソーシング」の一例:“群集”を意味する「クラウド」と“業務委託”を意味する「ソーシング」を合体させた言葉だそうで、インターネットを介して仕事の発注者と受注者を結び付けるサービスのことです。例えば一人で起業して、しかし自分に足りないスキル部分、例えばシッカリした管理部長や経理部長が欲しい場合は、クラウドソーシングで捜してくれば良いことになり、極端に言えば会社は一人で経営できることです。

このクラウドソーシング会社の例としては、「オーデスク」(米カルフォルニア在)があり2012年で130万件の結びつけ実績が有ると言う。160カ国、270万人の登録、その内日本人が1400人登録されているそうだ。

ここまで見てきますと、いよいよ「分散型資本主義」の到来と言えましょうか。この辺はジェレミー・リフキンの著書【第三次産業革命】(田沢恭子訳 インターシフト社)に詳しいですが、人、もの、カネの経営資源が大企業に集中していた時代は終り、専門能力を持つ“個人”がお互いに簡単に結びつき、各分野の知識を活用できる時代が到来したということです。

こんな変革の中では、これからは組織を巨大化しないことが肝要でしょう。米国では 2020年にもなれば、3人に一人はオンライン上で働くようになると言われており、次第に「会社員」が減ってゆき、いつの間にか“会社員”が世の中から居なくなっているのかも知れませんね。

そして“個人間での結びつき”、すなわち「寄り合い型社会」と言えば、日本人にピッタリの形態ではないでしょうか。益々チャンス到来と言えましょう。

それでは私のスピーチをこれで終わらせて頂きます。長時間ご清聴頂きありがとうございました。

<完>

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