【続・ふざける菜漬け】(その1)

付記:コロナ禍の巣篭もり生活をこれ幸いとエッセイを書いているが、それも思いついたら書くというベースなのでなかなか先に進まない。一 方で世の中が余りにも急速に変化しているのでエッセイ内容が一瞬にして陳腐化してしまう恐れがある。そこで2〜3編を書き上げた段階で一旦我がHPにUPして置いて、この続編がいつか完結した時点で書籍に纏めるかを判断することにしよう。そこで表題に(その1)と付いている。

<まえがき>

2020年は「新型コロナウイルス」感染問題が世界中を震撼させた。人類はこれまの歴史を見て「コロナウイルス」を撃沈させる術を確立しておらず、ウイルス自ら鎮静してゆくのを静かに待つしか無いのだ。従い今回の「新型コロナ」もいつになったら<コロナ禍>が終わるのか人間には予知出来ないのである。
私達の生活もすでに新しいスタイルに刻々と変化しており、口はマスクで覆われ、外での人との挨拶も直面を避けて斜に構え、また親しい人との会談はなるべく避けて、大声では喋らず、人との距離は少なくとも1〜2m離れ(ソーシャル・ディスタンスの励行)、更には仕事や学校授業も出来る限りリモートで行い、夜の会食には人数制限と時間制限付きで、つまりは「巣ごもり生活」を幅広く奨励されているのである。そんな世の中、エッセイを書くには恵まれた環境と言えるのかも知れないので、「巣ごもり」の中で心に貯まる鬱憤を晴らそうと思いつくままに書いてみたい。

実は2020年に入って私はすでに2本のエッセイを書いていた。1本目は俳句界に対するドクマ的俳句論として【俳句言いたい放題】を書き、2本目は襲ってきている<コロナ禍>が齎したものとして【新しい時代への入り口】を10月に書き上げた。 11月13日の金曜日、私はこの2つのエッセイを友人達に読んで頂こうと添え手紙を書いている最中に「13日の金曜日」という言葉が文中に出てきて、12年前つまり2008(平成20)年6月13日(金)にエッセイ【ふざける菜漬け】を書いた事を思い出していた。懐かしく感じながらそのエッセイを読み返していると、よしそれなら今回のエッセイ第3弾を【続・ふざける菜漬け】という題名にしようと決まった。しかしこのエッセイの完結はいつになるかは分からない。それは「新型コロナウイルス」次第なのだから。

【1】『うそ』の拡散と欺瞞国家の完成

2020(令和2)年はコロナウイルス騒ぎでの一年だった。「令和」と言う新元号になって初めての正月早々に我々は「新型コロナウイルス(COVID-19)」に襲われ、それ以降毎日TVニュースで発表される「1日の感染者数」に一喜一憂し、その棒グラブの2つの「山」を乗り切り3つ目の大きな山に挑戦しているが、頂上がどこに有るのか、その先が全く見えない。

11月13日の金曜日、私は<コロナ禍>による「巣ごもり生活」を続けている時に書いた2つのエッセイを友人に読んで頂こうと添え手紙を書いている最中に今日が“13日の金曜日”と知って、12年前につまり2008(平成20)年6月13日(金)にエッセイ【ふざける菜漬け】を書いた事を思い出していた。この【ふざける菜漬け】は“お経”から始まっていたのだが、そのお経の続きは『変新暑絆 金輪税安 金北災令』となるが『ヘンシンショハン コンリンゼイアン キンボクサイレイ』と読むと何か「お経」らしき響きに聞こえるのが不思議である。これは2008年から昨年2019年の12年間の「今年の漢字」をただ並べたものなのだ。つまり2008年の漢字は「変」で、この年は大きな“変化”の起こった年だった。アメリカでは不人気のブッシュ大統領に変わって、何と黒人のオバマ大統領が誕生した年で、“Change”を合言葉に立ち上がった。11月の大統領選挙の前の9月にはサブプライムローン問題から端を発した「リーマンショック」と呼ばれた金融恐慌がアメリカを襲っていたのだ。その頃日本は「食品偽装問題」で大騒ぎ。日本ハム牛肉偽装/事故米不正転売/中国産うなぎ偽装などの“うそつき事件”が多発していた。
2009年の漢字は「新」で9月自民党の麻生内閣が総辞職して、マンネリ化した自民党政権に嫌気した国民は「民主党に政治をやらせてみるか」という事で鳩山民主党“新”政権が誕生し自民党が野党に下野した。民主党の政治が始まって2年目の2011年3月11日に未曾有の大災害「東日本大震災」に襲われた。これによって「平和ボケの日本国民」が身近でかけがえのない人との「絆」(2011年の漢字)が如何に大切かを知る事になる。“禍福は糾える縄”の如くこの年の7月「なでしこジャパン」がサッカー・ワールドカップで優勝したのである。がしかし政治の世界では、与党経験の浅い民主党の政治もゴタゴタ続きで国民の失望感から2012年末には自民党が政権を奪取して「第2次安倍内閣」が返り咲くのである。
ここから安倍政権は2020年8月に健康上の理由で退任するまで続き、その期間は何と7年8ヶ月も続き総理大臣としての期間が歴史上で最長記録を作ったのだが、その長期政権の副作用はこれまた歴史に残る様な「欺瞞国家」を作り上げてしまっていたのだ。
2013年に返り咲いた安倍政権は「アベノミクス」という看板を掲げて華々しくスタートした。2011年の「東日本大震災」でドン底に引きずり込まされた国民は、長期に亘るデフレ経済から脱出する為に大胆な金融緩和政策を取った「アベノミクス」に一抹の期待を抱いた。すでに「第1次安倍内閣」を経験していた事もあり、民主党の没落により永田町で一匹狼となった自民党・安倍総理は自分のやりたい放題に政治を操ることが出来る環境が生まれ国政の私物化に突っ走ったのだ。
彼が政治家としてやり遂げたい事の一つに、幼少の頃自分を可愛がってくれた祖父である“岸信介”から教わったこと、「日本が真の独立国になる為には独自の憲法が必要」(戦後レジームからの脱却)を実現することに有った。私としてもこの考え方は正しいと思っているのだが、彼の場合はそのやり方に欺瞞があったと考えている。彼は【日本国憲法の改正】を正面から取り組む場合はその条件が余りに厳しく甚だ無理と判断して、何と現憲法の解釈を都合のいいように変えて議案を次から次へと成立させて行った。「特別秘密保護法成立(2013/12月)」、「集団的自衛権の行使容認を閣議決定(2014/7月)」、そして「安保法制=戦争法成立(2015/9月)」を経て、遂に戦争が始まれば自衛隊を戦場に送り込むことが出来る状態を作り上げたのだ。戦場への派遣に関しては、言葉ではやれ「後方支援」とか「存立危機事態の条件付き」とか言っているが、戦争とはいざ始まってしまえば、定義がどうのこうのなど言っていられないのだ。日本国民が戦場で間違って殺られたとなれば、全国民が「憎し」一色の気持ちを懐き戦わざるを得ない状態にしてしまうのが戦争と言うもの。彼は憲法9条に自衛隊明記が未達のままなので道半ばのような事を言っているが、実は内輪の人にはこっそりと「一応思い通りになった」と満足げに話していると聞く。きっと仏前で“岸おじいちゃん”にもその旨報告していることだろう。
次に彼の凄いのは2012/5月、内閣府に「内閣人事局」を発足させた事である。つまり官僚の人事権を手中に収めようという戦略であるが、これがバッチリと当たりこれ以降官僚たちに「忖度文化」を蔓延させ、2017/2月には「森友学園」や「加計学園」などの諸問題が発生、更には2018年に入ると組織内部での不都合な文書の改ざん・隠蔽が頻繁に行われる様になり、2018/7月には末恐ろしい「カジノ実施法」が成立してしまう。9月に入ると自民党総裁選で彼は三選され権力が益々一極に集中する結果となり公私混同に走らせた結果、2019/11月には「桜を見る会」問題にまで発展していった。
しかし2020年に入ると「新型コロナウイルス蔓延」が世界中を襲い、この感染症対策において彼は政策失敗を重ねてゆく。コロナウイルス君を相手には“安倍一強”勢力は全く通用せず、彼の繰り出す政策「アベノマスク」や「小中高の一斉休校」そして「PCR検査能力を2万件/月にUP」など無謀とも思える政策を独断的に発表し国民の顰蹙を買う結果を重ねて行った。4月に入って<コロナ禍>による国民救済策として安倍政権が「国民への現金給付を世帯に一律30万円」と方針を出すもそれに対して急遽公明党から「全国民へ一律10万円」と方針転換を要請され、公明党の連結政権離脱を恐れた彼はこれをスンナリと受け入れ、遂にこれまでの様な神通力がコロナ禍の下では通じない状況を暴露する結果となり、7月に入ると経済復興を狙って観光需要喚起「GOTOトラベル」を前倒しして実施するという無謀に走り、これが結果としてコロナ感染拡大に結びつき、やることなすことすべてが裏目と出てしまい、8月28日安倍首相が体調を理由に辞任し7年8ヶ月続いた「安倍政権」が遂に幕を閉じたのだ。
安倍政権7年8ヶ月の間で上述の如く「欺瞞に満ちた国」を作り上げてしまったのだ。むしろこの期間に世界に誇れる政策は何一つ作り上げてはおらず、恥ずかしながら日本は“ド三流国”に成り下がってしまったのだ。その“ド三流”の結果をそれぞれ分野別に具体例を挙げて記憶に留めて置くことにしたい。

国の将来に向けて最も大事な【教育】に関しては、例えば経済協力開発機構(OECD)調査では、国からの公的教育機関へ支出額で日本は32カ国中最下位と言う恥ずかしさ、また世界大学ランキングでは1位オックスフォード(英国)、2位スタンフォード(米国)、3位ハーバード(米国)の順で、東京大学は何と北京大学(中国)やシンガポール国立大学より下位の36位に成り下がった。
【経済】に於いては、“アベノミクス第3の矢”である『成長戦略』の失策とデフレ・スパイラルから脱出できぬまま消費税の二度に亘るUPによる経済長期低迷、更には原発に頼り続ける『エネルギー戦略』の大失敗、そして『再生エネルギー施策』では世界のスピートより2周遅れとなってしまったのだ。
【外交】に於いては彼の最も得意分野のように見えたが、対ロシアとの北方領土問題、尖閣諸島(中国)や竹島(韓国)の国境問題、更には拉致問題(北朝鮮)、そして慰安婦問題(韓国)などなど隣国との間でこれら諸問題は全く進展しておらず、むしろ後退した感がするのである。

このように過去を振り返ってみれば、1991年の「バブル崩壊」からデフレによる経済不況が続き、更に2008年の世界金融危機(リーマン・ショック)が発生し経済回復の道を失ったまま現在に至っているが、2020年に「新型コロナウイルス」が世界中を襲って来たが、このウイルスとの戦いをチャンスと捉え、私達の持つ過信や錯覚を“御破算に願いまして”、人間として本来あるべき生き方に軌道修正して1人ひとりがストレスの少ない日々の生活が送れるような社会に生まれ変わることを期待したい。  (2021年11月記)

【2】本当の『戦後レジームからの脱出』とは;

日本国憲法の基本原理は「国民主権」と「基本的人権」と「平和主義」と言われるが、この憲法が米国による占領下に於いて米国の手で作られたので、日本人が自分たちで作ったものでは無い限り、日本国憲法上でいう「国民主権」と書かれていても、この「主権」という言葉に日本人としての魂は籠もってはいない。GHQによって統治されていた当時では、我々は隣国のソ連、中国から守ってもらう為に米軍の駐留もやむなしと判断せざるを得なかったであろうし、一方米国は共産主義諸国から自由主義陣営を守るためのボーダーライン上の日本に駐留は必須と判断してお互いWIN-WINの関係に有った訳だ。しかし米国の判断で駐留米軍を動かすことは出来るが、米国側に特段メリットがなければ、“日本を守る義務は無い”と言える立場なのである。
そう考えるとやはり日本国民として「自分の国をどのようにして守るか」という事を真剣に考える必要が有るのだが、「憲法問題」とは大変に重たい課題であり、短期間で改憲が出来るものでは無いが、しかし国民一人ひとりがその目標(有るべき姿)に向けて一歩一歩意識を高めて行くことが必要であり、現時点で世界を襲っている<コロナ禍>がその問題に取り組むスタートラインとしてグッドタイミングと考えるが何故か。
これまで人間は欲望の赴くままに突っ走り世界中に人種差別、政治的迫害、宗教的迫害そして民族紛争などの問題を引き起こして来ているが、これら諸問題は人間同士のいがみ合いから生まれたものなのだ。しかし今、人間の力では太刀打ちできない大敵「新型コロナウイルス」が私達を襲ってきているのだ。感染症問題はその沈静化には相当長い年月が掛かってしまう事をこれ迄の歴史が証明しており、またこの災禍の終結がいつになるか人間には全く読めない為に全人類を不安に落とし込んでいるのだが、この時こそこれ迄に人類が作ってきた歪んだ関係を糺してゆくチャンスと私は考える。

そこで私達一人ひとりがこの<コロナ禍>の機に「自分の国は自分で守る」ということはどうゆうことかを考え、次に「そのためには何が必要か」を考え、それを皆で議論を重ねながら、現在のような「従属国家」(米国の植民国家)から抜け出し「独り立ちした国」になった頃、地球上に新しいレジームが生まれているのかも知れない。そこで日本が独り立ちした国になる為のプロセスの一例として私の考えを次に述べてみたい。

現時点で日本の最大関心事は何と言っても「対中国政策」に有ると思う。習近平国家主席が2013年に提唱した巨大経済圏構想「一帯一路」を着々と推進してきているが、もし世界が中国との対応方法を間違えると13世紀にユーラシア大陸に出現した巨大な「モンゴル帝国」の様に今度は漢民族による巨大国家が生まれる恐れがあるのだ。中国には古代漢民族の時代から「中国皇帝が世界の中心」と考えており(華夷思想)、中国共産党は隣接する国々に対してこの思想を受け入れさせて漢人の持つ文化レベルにする事によって差別が無い“愛国心”に満ちた世界国家を実現しようとしているのだ。更に<コロナ禍>においては、中国のような独裁的支配の方がロックダウン対応などすぐ取れるので、感染抑制には民主主義国より有利であり、世界でいち早く経済回復にも成功している結果(2020年10−12月期の実質GDPは前年同期比+6.5%)を見せられると益々先が恐ろしくなってくる。日本経済センターの予測では、中国経済に就いてコロナ危機の前では米中逆転が早くて2050年頃と見ていたがコロナ危機によって2030年頃には逆転かと予測しており皮肉な結果だ。

しかし情報化社会を迎えると、誰もが簡単に情報を発信したり、受信したりする事が出来るので権限が分散化されて行く事となり、地球上に有る隅々の情報が一挙に世界中に広がる環境が出来上がってる。これは大帝国の独裁者が広域に亘って統率して行くには甚だ難しい環境になっているとも言えるのだ。実際に中国では勢力拡大を図っている一方で「香港問題」や「チベット・新疆ウイグル人権問題」そして「台湾問題」など人権侵害問題を引き起こして来ており、更には「東シナ海、南シナ海領有問題」で海上の公道を自分のものにしようとする中国の戦略に対して、勝手な振る舞いは許さじとして日本、米国、オーストラリア、インドが中心となり安全保障、経済協力で連携を強くして行こうと中国包囲網を強化する行動に出ている。特記すべきはこの日米豪印の民主国家4カ国がアジア諸国に新型コロナウイルスワクチン10億回分を2022年末迄に提供するという行動に出ているのである。

特に中国、ロシア、北朝鮮など独裁国家と隣接する日本は、この<コロナ禍>を機会に世界中の自由主義国家を纏め上げる旗振り役となるべきである。そのためには即急に「日本をどんな国にするのか」の国民のコンセンサスを一つにして世界から認められることである。「外から攻められた時、我々はどうやって国を守るのか」、「米国の植民地的立場を続けるのか」、「軍隊を持たずして世界平和の道を先導するのか」などなど国民が議論を重ねて日本の行路を明確にすることだ。複数の大国の間に位置して大国同士の衝突を防ぐ「緩衝国」になる為にはとか、更には世界一安全な国ランキングでは「アイスランド」がいつも一位なのだが(日本は九位)、アイスランドは自国の軍事力は持たず海に囲まれた島国であり我が日本が学ぶところ多々有るのではないか。世界中の「緩衝国」や「中立国」を集めて「新しい国連的組織」を構築できれば大国の非人道的行動を阻止できると信じる。
日本が先頭になって行動できる卑近な一例として、有名無実化してしまった「国際連合」に変わる新たな国際会議組織作りに挑戦する。現在の「国連」は常任理事国が中国、ロシア、フランス、イギリス、米国の5カ国であり、「安全保障理事会」ではその常任理事国が「拒否権」を持っているのである。ところが常任理事国の中に独裁国家(中国、ロシア)と民主主義国家(フランス、イギリス、米国)が居る限り意見が一致するとは思えず世界の安全など保証されるはずは無いのである。
これ迄にも国連の見直し(改革)に就いては長い間議論されて来てはいるが、常任理事国のメンバー構成からして、更には自由主義国家の代表格である米国が「国連」に対して力が入っておらず、現在の機構のままでの国連の改革は難しく、そこで被爆国であり原発事故の体験国である日本が世界の自由諸国(緩衝国や中立国など)を巻き込んで「新しい国連」を立ち上げるよう行動に出てはどうか。これこそ日本にとって本当の『戦後レジームからの脱出』を図る道であり、21世紀の大人的な取り組み姿勢ではないだろうか。  (2021年12月記)

<その2>へ



コメントを残す