
今日は6月21日の土曜日。朝から強烈な太陽光線が道を白く光らせている。ここ数日TVでの天気予報でも「日本列島の天気地図から停滞前線が全く消えて梅雨はどこえいったのでしょう」なんて言っているが、気象予報士の頭から「梅雨」が消えていないらしい。日本には私達が知っている ”しとしと雨が降り続く梅雨”はもう無くなってしまったのに。
朝食の時にワイフが、「鮭の切り身も、畳鰯やサラミ・ソーセージも、エイのヒレも無くなったので、アメ横に買いに行かなくちゃ」なんて言い出した。そこで私が「こんな猛暑の中で人混みのアメ横に行くなんて殺人行為だよ。止めた方がいい」と主張した。しかしこのまま言いっ放しでは「それでは、どうすればいいの?」と返事が返ってくる前に私からこんな提案を出した。

「私がクロスバイクでチョイト行ってくるよ。暑い時には自転車で走るのが意外と気持ちがいいんだよ。いつも行っている買う場所を全部知っているから私なら1時間も掛からないよ」と言ったらワイフはキョトンとして聞いていたが、自転車に乗れないワイフは自転車で走るとどんな状態かを全く知らないのが功を奏し「そう、そうしてくれる」と簡単に同意してきたのだ。
いざ出陣となれば私の場合はその準備に非常に大げさなのだ。まずは軽装に着替えリュックを担ぎメガネにはサングラスをはめといった具合。「さあ!行って来るよ」と玄関を出た姿が【写真1】。
我が愛車を倉庫から出して細いタイヤの空気圧を慎重にチェック、そしてワイヤー型ロックキーを確認して、「それでは出発!」の姿が【写真2】。丁度午前11時にペダルを漕ぎ出していた。

我が家から「アメ横」までの行程は言問通りに出てそのまま本郷通りを目指す。本郷通りとの交差点に出てそこを直進、つまり東大と東大/農学部の間を抜け、最初の二股交差点を右に折れ「暗闇坂」を下る。東大「弥生門」を通過するが、その反対側が「弥生美術館」でその隣が「竹久夢二美術館」。そして暫く行くと東大「池之端門」に出て、そこを左に折れ「不忍通り」に出れば目の前が「不忍池」。さすがにこの暑さでは池の周りに人は疎らで、我が愛車とスカイツリーのツーショット【写真3】。

池の中にたった1台のボートが浮いていたが男性がろを漕ぎ、女性は日傘を刺しているが、こんな暑い中でボート乗りが楽しいのだろうか? それとも「余程の込み入った話」でもしているのだろうか。しかしボートはほとんど動いていない【写真4】。

不忍池に沿って走り中央通りに出て「鈴本演舞場」の丁度向かい側に駐輪した。「アメ横」の路地に入ると、さすがに人の数が増えているが殆どが日本人ではないようだ【写真5】。早速「鮭の切り身」を水産物店で、「畳鰯」そして「皮付き落花生」を乾物屋で、次に二木の菓子に入って「サラミ・ソーセージ」、「エイのヒレ」そして「チョコレート・ボール」を買い込みリックに押し込んだ。

買い物を終えて駐輪した場所に戻るとテンテケテンと太鼓の音が響いている。道路の反対側の「鈴本演舞場」の昼の部開演の合図太鼓のようで、大勢の人が館に吸い込まれてゆく【写真6】

道幅の広い中央通りを走ると、アスファルト地面からの照り返しが強く、益々気温は高くなっている様に感じて、不忍池の周りの大木の木陰が恋しくなる。急いで不忍池の入口を入ると今度はサックスの音色が聞こえてくる。懐かしい赤い郵便ポストの隣でサックスマンが一人でジャズナンバーを吹いていた【写真7】。サックスの低音とスローな音曲がこの気狂い的な暑さの中でチャンとマッチしていた。

木陰から不忍池の奥の方を見ると薄っすらと白い線が横に走っている様に見えるのは一体何なのかと疑問が起きてくる【写真8】。蓮の花にはまだ時期が早いし、あの横に走る白っぽい線が不思議だ。

よく近づいて見れば、それは蓮の大きな葉がめくれて白く見えたのだ【写真9】。これも異常な暑さがそうさせたのか。そうしてもう一つ気がついた。普段であれば池の周りに多くの鳩が飛び回っているのだが、今日は一羽も見えない。これもこの異常な暑さが原因なのだろう。
この暑いさなかにウォーキングしている一団が何と大きな木陰の中で一休みしているようだ【写真10】。私も来たる7月16日に【文京を歩くかい】の開催を企画しており、あのような木陰を求めるのが他人事ではない様に思えて来た。

往きの時にスカイツリーをバックに写真を撮った所に戻ってきて涼しげに咲き誇る紫陽花の脇に自転車を止めて一休みする。そしてペットボトルの水をガブガブと飲む【写真11】。

さあ、これから来た道を家に向かって走るのだが、その途中、「竹久夢二美術館」のところに差し掛かった時に左手の東大構内の方からセミの鳴き声が聞こえて来たのだ。私は今年になって初めてセミの声を聞いた事になるのだが、その鳴き声から今鳴いているのは「ツクツクボウシ」と分かった。ところが、この付近でこのセミが鳴くのは例年8月末から9月に入ってからなのだから、こんな現象も気象異常のせいなのかも知れない。
家に戻ったのは昼の12時10分。重いリックを下ろしてワイフに「ただいま」と告げると、「あら、早かったわねぇ!」との一言。私にとっては激暑の中での「ひとりサイクリング」は短時間ではあったが貴重な体験だった。