本の物流と常備配本

出版してみて初めて分かることがある。そして出版業界がなぜ苦戦しているのかの理由も見えて来るような気がする。そこで出版業界の流れを見てみよう。下図はある出版社の図を使わせて貰ったが、出版社と書店の間に「取次店」というのが存在する。そもそも全国に書店が2019年5月時点で1万625店あるそうだが、出版社はその書店全てにきめ細かな営業活動が出来ないので、書店への配本とか書店からの返品など流通を一手に引き受けるのが「取次店」の仕事なのだ。

しかし原則取次店は在庫を持たない。取次店は傘下の書店の特徴や、売れ筋の本かの判断をして配本数を出版社に伝える。この業界は「再販制度」を取っており出版社が取次店への小売価格を決め、書店は本に明記された定価で全国一律で販売する。

この物流の特徴は、本を沢山売ろうとする営業活動をする人はいないという事。と言うことは本の販売数の大小は、著者名がだれでも知っている有名人とか、著者あるいは出版社が大々的に広告宣伝を行うとか、何らかの理由でメデイアに取り上げられる偶然性などのファクターによるものと思われる。
書店では本を置くスペースに限り有り1~2ヶ月全く売れない本はすぐに返品する。出版社は本を切らさない為に次から次へと新刊本を準備し取次店に配本し続ける。こんな苦しい仕組みでは出版社は採算が上がらず、単行本に重心を置かずに教育分野の辞書・辞典や月刊誌、そして趣味雑誌から週刊誌など”雑誌分野”で採算を取っているのが実情と言える。しかしインターネットの時代となり、在庫を全く持たないで済む新しい流通形態「電子出版」そして「オンデマンド出版」などが普及して来ると、書店の首を益々閉める方向に突き進んでいるのだ。

ところで、今回拙著が「出版社の新企画”常備配本”に選ばれ、紀伊国屋書店の5店舗(東京/新潟/富山/大阪/熊本)にて1年間”常備”してくれるとの連絡を受けたので、紀伊国屋大手町店を訪ねてみたが、拙著があった!あった! しかし”常備”という特典は”1冊売れたらすぐに取次店から1冊取り寄せます”ということであり、全く売れなければ拙著が1年間棚に有るというだけ。それでも著者としては幸せに感じなければいけないのだろう。こんど夏にでもまた同店を訪ねてみよう。

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