ZOOM講演『神の領域に手を突っ込むな』

9月25日午後7時から早稲田大学・異業種勉強会『セールスフォースマネジメント研究会』(以下「SFM研究会」)に於いてZOOMによるスピーチの機会を頂き、テーマ『神の領域に手を突っ込むな』をお話させて頂きました。このお話の骨子を講演で使用したパワーポイント31枚のスライドの一部を使いながら解説したいと思います。

まずは「神の領域」から説明致します。私は中学生の頃、マクロの世界とミクロの世界は同じ構造で出来ており、この仕掛けを作ったのは「神様」であると思っていました。そして今もそのように信じております。この構造は、最も安定した状態で、この状態を壊す行為は神様に逆らう行為であり、結果的にはその行為に対して神様から「しっぺ返し」を受けてしまう宿命にあると言う考えであります。それではここでマクロの世界とミクロの世界の例を挙げて説明しましょう。

マクロの世界では「太陽系」と「宇宙」について説明します。このように太陽を中心として惑星がグルグルと循環しているのですが(左図)、これを外から観て「確かに!」と確認した訳ではありません。このように考えると現状の知識レベルですべてがうまく説明出来るからです。そしてこの太陽系が生まれたのも「宇宙の誕生」すなわち「ビッグバン(大爆発)」によると言われています。(右図)ビッグバンから現在まで138億年で、そして今も宇宙は膨張を続けていると言われています。宇宙には「元素」以外に「ダークマター」や「ダークエネルギー」と称される怪しげな「暗黒の物質」があり、これが宇宙の90%を占めていると言われますが、その正体はまだ解明されていないのです。そして宇宙の分かりやすい図として筒型のものを掲載しましたが、ところで、この筒の外側は何なのでしょうか??すなわちまだ何にも分かっていないと言うことで、これはどんなに時間を掛けて研究を重ねても人間には解明出来ない領域と思っています。それでは次にミクロの世界の話をしましょう。

ミクロといえば「原子」となりますが、原子の構造は原子核の周りを電子がグルグルと回っているのです。原子のサイズは凡そ1億分の1cmで原子核は約1兆分の1cmで、原子核は「陽子」と「中性子」とそれらを結び付ける「中間子」で構成されています。しかし「宇宙」は138億年という巨大な広さを持ち、片や「原子」は1億分の1cmという極小の世界なのですが、しかし実は構造は同じであり、その私なりの解析はスライド上の右の箇条書きを順にお読み下さい。私は誕生の経緯からして同じ構造だと考えている訳です。

次にこの安定した「神の領域」を人間がぶち壊している極端な例から話を始めましょう。まずはマクロの世界で人間は宇宙に進出しています。人間は何故に宇宙に飛び出すのでしょうか。その理由はスライド上の右に書いてありますが、どれも単なる人間の欲望を叶える為であり、何の役に立つのかはハッキリしません。人間が飛び出している宇宙は上空400km程度の高さであり、地球をリンゴに例えればリンゴの皮の表面あたりで喜んでいる訳です。そこは神の領域ですから、宇宙服を脱げば一瞬にして放射能を被爆してしまうのです。それでは次にミクロの世界で人間が手を突っ込んでいる例をお話します。

原子の中心にある「原子核」に「中性子」をぶつけると、それが2つに別れ(核分裂)、その時に巨大な「熱エネルギー」を発散することを知った人類は、このエネルギーを活用して「原子力爆弾」や「原子力発電」の開発に至ったのです。しかし最も安定している原子に中性子を当てると「放射能」を放出して人体に致命的な危害を与えるのです。これが所謂「神からのしっぺ返し」なのです。あの3・11の東日本大震災で「福島第一原発」で炉心冷却システムが故障し炉心メルトダウンという致命的事故を起こしているにも拘わらず、日本国はこの「原発」を最大限活用すると岸田首相が態度を豹変しているのです。更に空いた口が塞がらない話に日本政府は「プルトニュウムの再利用」を真面目に主張しているのです。

原子炉の中で「ウラン燃料」を核分裂させると「プルトニュウム」が生まれます。このプルトニウムは自然界には無く、人間が作った恐ろしい人工の元素なのです。その恐ろしさはプルトニウムのスプーン1杯で東京都民の致死量に相当するそうで、またプルトニウムの放射能力が半減するまでに掛かる期間(半減期)は何と2万4千年。まさしく「殺人放射性元素」と言えましょう。ところでウラン鉱で核分裂するのは「ウラン235」で、それは全体の0.7%しか有りません。残りは「燃えないウラン238」でこれを燃える「プルトニウム239」に変換するのが「高速増殖炉」なのです。(左上スライドの右側のサイクル)ところで左側のサイクルは「プルサーマル」といい、一旦使用した燃料から再処理によって分離されたプルトニウムをウランと混ぜて混合酸化物燃料(MOX燃料)に加工してもう一度原発で使用する方法です。この2つのサイクルは今現在も稼働する目処は全く立っていません。私の考えですが、神の領域に割り込んだ技術は絶対に成功しないのです。そしてこのサイクルは「非循環型」なので結果的には地球を壊すだけなのです。何でこんな社会になってしまったのでしょうか。それを次の「第2章」でお話致しましょう。

何故にこのように役に立たず地球を破壊するような技術が羽振りを利かしているのでしょうか。神の領域に手を突っ込んでいる犯人は「近代文明」すなわち「物質文明」であると思っています。私にとってバイブル的な本があります。それは岸根拓郎(京都大学名誉教授)著『人類の究極の選択』です。この本は1995(平成7)年に発刊されたものですが、その15年後の2010年に私が神保町の古本屋めぐりをしていた時に偶然に巡り合ったのですが、この本の「はしがき」の部分を立ち読みして大いに惹きつけられ即購入したのですが、この「はしがき」には左のスライド上の文言以外にも次のようにも書かれておりました。
『20世紀は工業化と都市化が同時並行的に進行した時代で、工業化され画一化された近代都市は、機能的ではあるが、地域の伝統文化を消し去り、人間関係をも荒廃させ、冷たい社会を形成している。』

ところが20世紀後半になると、科学者たちがこの急激な文明の発展形態が地球を破壊しているのではと気づきはじめIPCCやCOPという国際会議を作り始めました。こうして地球環境の危機に対処すべく、IPCCで警告を出し、COPで規制を作り上げて来てはいるものの中々世界が一つになることが難しく、現実ではウクライナ戦争や内乱そして難民移動などの諸問題が多発し、更には人間には制御できない「気候変動」によって大洪水、干ばつ、そして山火事などに襲われ、結局はIPCCが『世界の平均気温は産業革命からすでに1.1℃上昇しており、2030年には1.5℃に達成する可能性がある。これを抑えるために世界全体で温室効果ガスを60%削減する必要がる』と警告をしているが、このままでは目標達成は難しいように思います。

「物質文明」が地球を壊したというなら、これを変えてゆくには「非物質文明」に切り替えて行く必要が有ろう。「物質文明」とは?そして「非物質文明」とはに関しては左のスライドを一読頂きたい。つまり非物質文明とは、神の領域を侵さずマクロ/ミクロの世界の所でお話した『グルグル回る循環型社会』ということでしょうか。実は日本にはこのグルグル回る循環型社会が存在していたのです。それは『江戸時代』です。私は2005(平成17)年にSFM研究会においてテーマ『21世紀はこころの時代』をお話させて頂いた時に使用した資料【着物の一生】を次に掲載しますのでじっくりとご覧ください。全く無駄のない世界なのです。

この【着物の一生】のサイクルを見ても実に無駄のない使い切りの世界ですね。それに比較すると現在の「使い捨て社会」は目に余るものがありますね。
さて、いよいよ本日のスピーチの纏めに入りますが、現在の「近代文明」の起こりが18世紀イギリスで起きた「産業革命」がスタートとすれば、この文明を「西洋型物質文明」と呼ぶ事が出来、物質文明が「もの」によって進化し続けて来ているとすれば、これからは「もの」から「こころ」に重心を置く文化、つまり江戸時代のような「東洋型精神文明」に移行して行きながら地球崩壊を止めてゆかねばなりません。

江戸時代が如何に「精神文明」であったかを証明する証拠が有るのです。それはドイツ人のハインリッヒ・シュリーマンが藍の商売で巨万の富を得て1864年に世界漫遊の旅に出て翌1865年日本に立ち寄ります。その旅の記録を『シュリーマン旅行記』として本に残しています。この本の中で書かれている文章の一部を左のスライドに書いて有りますので一読ください。更に彼はこうとも書いています。「もし文明という言葉が物質文明を指すなら、日本人は極めて文明化されていると答えられるだろう。なぜなら日本人は工芸品において蒸気機関を使わずに達する事のできる最高の完成度に達しているからである。それに教育はヨーロッパの文明国家以上に行き渡っている。シナを含めてアジアの他の国では女たちが完全な無知の中に放置されているのに対して、日本では男も女もみな仮名と漢字で読み書きが出来る」

日本人だからこそ出来る「西洋型物質文明」から「東洋型精神文明」への転換を私達一人ひとりで心がけて参りましょう。その為にはどうしたらいいのか、私の考えを左のスライドで述べています。ここでは詳細の説明は割愛させて頂きますが、左のスライド上の「お月見」の写真を見て私達それぞれが何かを感じることが出来るのは日本人だけでは無いでしょうか。
そして最後に小さな提案をさせて頂きます。

左のスライドを御覧ください。そこで私は「小さなトライ」をすることにしました。自分なりに毎日の生活の中に少しでも地球環境に調和している生き方を取り入れる為に、私はまず「環境ラベル」に関心を持ちこれから物を購入する際には、その製品があるいは製造メーカーが「環境保全」に注力しているかを確認した上でOKとなったらその『もの』を購入するように心がける努力をして参ります。地球上の人類皆がそのように行動をとればきっと「精神文明」が花開いて行くことでしょう。

現在世界中には100種以上の「環境ラベル」があるそうですが、上図はその代表的なものを15種上げてみました。いざ買い物に出た時に、「環境ラベル」に関心を持って商品やサービスを捉えてみると、商品の裏側に「環境保全」に関する文言やこれら環境ラベルを見つけることが出来、そして納得した上で購入するのです。そのような行動を取ることで、今までのように、単に「価格」や「便利さ」や「ブランド」だけで判断し購入していた態度を反省するようになるのです。そう、この小さな行動こそが「精神文明」に入ってゆく入り口だと思うのです。

これからも新しい技術や商品が生まれて来ると思いますが、それが神の領域を壊してはいないか、つまりは「循環型」であるかを判断した上で私達が受け入れて行けば、これまでの価値観と違って精神的に安定した社会になって行くと信じます。そこで最後に真新しい循環型「カーボン・オフセット」に関して解説致しましょう。私の友人で林業を経営している方より【脱炭素経営EXPO](9/13〜9/15)に出展するとの案内を頂き、先日幕張メッセを訪ねました。友人の会社が挑戦している「カーボン・オフセット」事業とは、企業や工場がCO₂削減に努力してもどうしても目標値に達成出来なかった部分をオフセットする為に「森林吸収クレジット」を購入します(上スライドの左のサイクル)。一方このクレジットで得た森林業者はその資金を使って森林の伐採/加工/植林/枝打ち/間伐/収穫のサイクルを繰り返し(上スライドの右のサイクル)森林を育ててゆく「循環型事業」なのです。

以上で今回のスピーチ概要のお話を終わらせて頂きます。尚、現在この内容を含めたエッセイ集【続・ふざける菜漬け(その2)】を編纂中で完成しましたらHPにて発表させて頂く予定です。

<完>

ZOOM講演『神の領域に手を突っ込むな』” への2件のフィードバック

    1. 早速のコメントありがとうございます。とにかく現在のマネー資本主義のままでの進化の仕方では将来に(次世代に対して)禍根を残すのです。いや、未来が消滅してしまうかも知れません。何とか今の価値観にブレーキが掛かるような社会に変わって行って欲しいものです。

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